2004/7/21
Acrobat 4.0xの挙動不審

Letters of Creditという本を見ていたら、各数字(0〜9)が半角幅で作成されている原則の紹介ののち、次のような記述があった(p.76)。

Monotype followed that principle, though the em space was not necessarily a square of the type size. This meant that in the text sizes of most Monotype faces the numerals were 9 units wide (the em being 18 units). That width is adequate for non-lining (old style) numerals; but it is really too narrow for lining numerals — the zero in particular often looking unhappily pinched amongst otherwise normal characters.

実際、Monotype Century Old Styleで組んでみたときに「2000」がえらく詰まってしまうことには気がついていた(2003-05-25の記事)。しかし私はfontinstパッケージの丸め誤差が原因だと思っていたし、よしんばそうでもくても西欧人の感覚では私たちよりも詰まり気味(特に単語間の空白について)を可とすると聞いていたので、東夷の素人には手出し無用の話なのだと決め込んでいた。それは誤りだったのだ。このほか「A lowercase l with too little side spacing, as in some versions of Helvetica」(p.77)などともあって、我々の目から見て変なものの中には本当に変なものもあるのだと悟る。

何気なく見ているうちに気がついたもうひとつの点は、クヌース先生のDigital Typographyに掲載されていたヘルマン・ツァップによる手書きのEuler書体による数式である。実際のEuler書体とくらべてみよう。

分数の位置

いちばん上がツァップの手書き、真ん中がEulerのディスプレイ数式、最後がEulerのテキスト数式だ。なんとEulerパッケージを使うと分数線と+の横棒が一直線に並ばないではないか――などという発見もあったのだが、それは深く追及しないこととして、注目したいのは分子の位置だ。こうして見ると、ディスプレイ数式の分子は高すぎるのではないかという気がしてくる。

この分数の組み方については、ベースラインをそろえる慣習になっているのだと書いた(2003-03-25の記事)。しかし批判的に検討すれば、この慣習は単に組むのが楽だったからだけなのかもしれない。もしも和文の中でいびつに感じられるのなら直すべきだろう。数式組版は欧文に準ずると嘯いて調整をさぼることもできるだろうが、その場合の欧文は和文に対する従属欧文であることを忘れてはならないと思う。といっても電算写植の数式組が最適なわけではない。たとえば添字の出来はTeXのほうがよい。

話を元に戻そう。Monotype Century OldのAFMファイルを改めて見てみると、数字は半角幅どころではなくもっと狭い(0.469)ことに驚かされる。LinotypeのCentury Oldは半角幅だった。Linotype版とくらべてMonotype版のCentury Oldは詰まりすぎる感触があったため、AFMファイルを改変して幅を5%ずつ広げてみた。そうして組んだ例をPDFファイルとして挙げておく。比較参照のためにLinotype版も並べた。

ようやく表題にたどり着いた。Acrobat [Reader] 4.0xをお使いの方がいらっしゃったら、5%広げたものをdvipdfmx版とDistiller版のどちらも開いて印刷してみてほしい。私の環境では、dvipdfmx版のほうは正しく両端揃えにならない。2002-12-30と同じ原因からくる現象なのかもしれないが、Acrobat 5.0xでは再現できないためAcrobat 4.0xの不具合の可能性もある。はたまたAdobe PS Driverの問題かもしれなくて、よくわからん。

Acrobat 4.0xの不思議な挙動はほかにもあって、PDFJ 0.75を使っているときに気がついたのだけれども、PDFファイルの情報にProducerとCreationDateだけあってModDateがないとき、Helveticaであるべき場所がGothic BBBとなり文字化けすることがある。ModDateを入れるだけで解消されるのが何とも不思議だった。Acrobat 4.0xは軽快動作が気に入っていて常用しているのだが、そろそろ乗り換え時かもしれない。

まだ時間があるのでもう少し。AFMファイルを見るかぎりでは、Monotype Century OldのほうがLinotypeよりもType1フォントとしては古い。だからかなのか単に手を抜いているのか、Monotype Century Oldはカーニングがちょっと変だ。他社のCentury Old Styleを参考に、機会を見つけて調整してみたい。この書体はComputer Modern族と調和する貴重なOld Styleだから、おいそれと投げ捨てるわけにはいかない。

2004/7/12
はじめてのOOo

Microsoft Officeに似せた統合ソフトOpenOffice.orgの名前だけは聞いていたのだが実際に使ったことがなかったので、テスト用の機械に導入した。とりあえずWriter(ワープロ)だけ使った感想を以下に記す。

気に入った点。和文書体に対する従属欧文書体の設定で、寸法を独立して変更できること。数式エディターで「int_a^b」と打つと定積分が表示されるなど、キーボード主体に操作できること。検索で正規表現が使えること。エディターとしての基本性能はMicrosoft Wordを上回っている。

弱点は想像どおり日本語まわりに集中している。たとえば和文・欧文が混ざった行では、行の高さを相対指定していると行間がずれるし両端揃えが(誤差1mm以下ではあるが)揃わない。また、日本市場に特有の罫線への配慮(Word 97以降の鉛筆・消しゴムツールなど)はないので、清書用具としての使いかたではWordに対して不利だろう。

もうひとつ気になるのは、日本語文書の標準的な雛形が芳しくないことだ。MS P明朝-12pt-左寄せでは、テキストファイルをそのまま貼り付けて印刷するわけにはいかない。行間も余白も狭いし見出しのスタイルは欧文的だし。

文句ばかり書いてもはじまらないので、手直しした雛形を用意した。new_standard.lzh(6.7KB)を解凍して出てきた「新標準.stw」を標準的な雛形として採用するには次の手順を踏む。(1)〈ファイル〉-〈ドキュメントテンプレート〉-〈管理...〉を選択し、出てきた窓の左枠「標準」フォルダーを右クリックして〈テンプレートのインポート...〉から「新標準.stw」を登録する。(2)「標準」フォルダーの中に登録された「新標準」を右クリックして、〈標準テンプレートとして設定〉を選ぶ。(ヘルプで「標準テンプレートを変更する」として検索すると、画面付きのヘルプが呼べる。)

2004/7/7
PDF 1.3とOpenTypeとキヤノンのプリンター

むかし、ガンマ関数とベータ関数について簡単にまとめたものを人に見せてみたところ、極座標変換のところがわからないという返答をいただいた。重積分の変数変換はきちんとやるとかなり大変そうなのだが、そんなのは私の手には余るので、あくまで簡単にまとめてみた。それが以下のファイルtrans_vars.pdf(147KB)である。

本文の明朝体は、仮名がモトヤ明朝2(TrueType)、漢字が小塚明朝Pro-R(OpenType)を98%にしたものになっている。dvipdfmxで作成したPDFのバージョンは1.3なのだが、OpenTypeフォントを埋め込めるのは1.4からではなかったのか。なぜかAcrobat 4でも表示できるし、それどころかAcrobat 5以降よりも綺麗に見える。(Acrobat 5でOpenTypeとTrueTypeとの見えかたを均一にしたい場合には、CoolTypeを有効にするとよい。)

印刷。うちのプリンター(LaserWriter 16/600 PS-J)は600dpiで高精細ではないが、納得のいく出力をする。試しにキヤノンのLBP-830で出力させてみると、分数線や根号の横線が太く出力される。これらは文字ではなく線画の部分だ。設定も関係してくるのかもしれないが、詳しく検証しないまま帰宅してしまった。

2004/7/5
ホームズとコロンボ

最近の週末の楽しみは『刑事コロンボ』のDVDを見ることである。順不同で見ているし見た数も少ないけれど、「二枚のドガの絵」の最後にはのけぞったし、「忘れられたスター」の締めくくりは心温まるものがあった。(参考:「安葉巻の煙」)

残念なのは、コロンボと聞くとすぐに思い出す口笛っぽい曲(NBC Mystery Movie Theme)がDVDに入っていないことだ。メインメニューのBGMにでも入れておいてくれればよかったのだが。聞きたくなったのでRolandがSC-88Proのデモとして作ったMIDIファイルを聞くが、バンドの臨場感がない。あきらめてCDを購入する。なお、別バージョンの視聴ができて、これも悪くない。

もうひとつ残念なのは、「殺人処方箋」で日本放映時にはカットされた部分のコロンボの吹き替えが銀河万丈になっていることだ。なぜ石田太郎ではないのか。おまけに犯人役の声も麦人になっていて、会話を聞いているとピカードとウォーフのようだ。

かといってピーター・フォーク自身の声はそんなによくはなくて、全体としては吹き替えのほうが好きだ。コロンボのしゃべる日本語が古い感じの下町言葉でよい。(「ちょいとよござんすか?」「あたしゃね」。)英語字幕を出しながら日本語音声で聞いていると、そんなふうに訳すのかと感心することがある。

日本語訳を作成されたのは故・額田やえ子さんという方だそうで、この方は『ホームズ』の日本語訳もされていたそうだ。そういえばホームズも、「ちょっと読んでみたまえ」「兄上」とか大正時代を彷彿とさせるようなしゃべり方で、ヴィクトリア朝の雰囲気をよく出していた。

翻訳の名人芸というと中野好夫さんがすぐに浮かぶけれど、吹き替えにもそういうものがあることを知り、勉強になった。某ページからの孫引きになるけれど、同じ英語でもコジャックとコロンボとでは次のように訳し分けるという。

                      コジャック        コロンボ 
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Come on!              早く来い          こっちこっち 
That makes sense.     筋は通ってる      ごもっともです 
Let me see that.      見せてみな        ちょっと拝見 
Take him. He al-      連れてけ。前説は  頼むよ。黙秘権は
ready got his right.  もうすんでる      説明してあるからね