2003/2/28
Graphing Calculatorに更新する

かつてPowerMacにおまけとしてついてきていた「グラフ計算機」は、機能はそれほどでもなくともMacらしい佇まいをした優れたアプリケーションだ。Ron Avitzurが学生時代に開発し、その使い勝手のよさはドン・ノーマンをして引き合いに出さしめたという。(林伸行「#2 失われたパラダイム」。)「NuCalc 2.0」としてWindows版が出ていることを書いた憶えがあるし、また使い勝手のよさを説明しようとして挫折したこともある。私にとっては理想的なGUIをもつソフトウェアのひとつだ。(CIEC第8回研究会報告も参照。)

NuCalc 2.0の機能面での不満のひとつは、座標軸の目盛りだ。常に数字で表記され、変更することができない。そのため、三角関数などをグラフ表示させたとき、周期や極値をとる点などがつかみにくい。ワンタッチで軸の目盛りを角度(弧度)ベースに変えられれば便利である。下の例だと、1.0471976で極値をとるというよりは、pi/3で極値をとると表示されてほしい。

Graphing Calcuratorの画面写真

この要望はかなり一般的なもののようで、Pacific TechFrequently Asked Questionsにも載っている。新しい版では背後に画像が貼りつけられるそうで、これでpi区切りのラベルを貼る解決策が提示されていた。とってつけたような方法だが、ないよりはずっとよい。残念ながら同機能はNuCalc 2.0にはない。Graphic Calculator 3.2では複素数関係でも機能向上を果たしているので、更新することにした。

このソフトウェアは、機能のわりに値は張るし英語版ではあるのだが、もっと日の目を浴びてほしい。特にWindows利用者にお薦めしたい。

2003/2/28
残量当て

自然の量的変化が乗法的・指数的であるのに、それを感じとる私たちの感覚は加法的・線形的であることが多い。たとえば、音が1オクターブ上がると周波数は2倍になる。だから、ピアノでひとつ右の鍵を叩くと音の高さは「2の12乗根」倍(かけ算)されるのだが、実際には音が足し算のように高くなると錯覚してしまう。もうひとつ挙げると、為替レートで1豪ドル60円から70円になることは、1米ドル120円が140円になることに匹敵する変化(16.7%の円安)なのだが、瞬間にはなかなか理解されない。

この錯覚は昔から知られてきたことなので、紙を百回折る話だとか曽呂利新左衛門と秀吉の褒美の話だとか、逸話や小話の類は数多くある。最近それを実感したのは、焼き込み済みCD-Rの記録面をから残量を当てる実験だ。CD-Rは内側から記録されていくので、変色した部分面積が記録された容量になる。それなのに、どうしてもパッと見では半径で残量の見当をつけてしまう。内側から半分くらいが変色しているCD-Rは200MB強しか記録されていないはずなのに、325MBほどかと勘違いする。

2003/2/22
ATOK16を使って思ったこと

日本語IMEに長らくATOKを使ってきたのは、Windows版・Mac版とでユーザー辞書にバイナリ互換があったからだ。文書作成をWindows環境だけで行なうようになってからはATOKである必要性は薄れたものの、ほかに乗り換える理由もないのでそのまま使っている。ATOK13からしばらく更新していなかったのだが、助数詞まわりの変換効率が向上したとの売り込みを読んでATOK16を注文した。2月7日にとどく。

期待していた変換精度は、ATOK13にくらべ文節区切りの失敗が少なくなったように思われる。係助詞「は」の扱いがうまくなったのではなかろうか。文節の区切りまちがいがあると文節長の変更をしなくてはならないので、単なる変換まちがいよりも罰点が大きいと私は考えている。このまちがいが少なくなったことだけで、基本性能の向上は感じることができた。

細かいところでは、ATOKナビの着眼点はよい。この機能を使うと、カーソル付近に現在の入力モードを表示させることができる。ただ、入力モードを切り替えるたびに窓が出てくるのは目障りだ。一部のエディターに搭載されているように、カーソルの色や形状でモードが判断できると便利だと思う。

ATOKナビ

動作はATOK13よりも少し遅くなった。この「少し」は高速入力時には大問題で、打鍵に対する応答感度の低下により親指シフト使用時での入力取りこぼしが増えた。推測変換などの支援機能をすべてオフにし、辞書をメモリーに読み込ませるようにすると、だいぶ改善されたような気がする。そのほかの補助的機能は使っていないので、評価できない。

派手になった外観は、あまり好みではない。変換候補窓に出てくる「ATOK」という自己主張は、何とか消せないものだろうか。NetNoteというおまけのエディターも派手だったが、こちらはWindows標準の画面表示に戻す機能を備えていた。それにしても、そこまで独自な外観・操作性にしたければ、Windows以外でやればいいのに。

ATOK16の変換候補窓

考えてみれば、ジャストシステムは日本のLinux界に最も大きく貢献できる企業のひとつだろう。日本語IMEと日本語フォントを自前でもち、独自シェルやブラウザーにも手を染めていたのでGUIノウハウもある。KDE 3.1をベースに、それなりのデスクトップ環境を提供できるのではないか。

同社はJava版一太郎とLinux版ATOKを販売していたが、これが商業的に成功したのかどうかは不明だ。ただ、戦略としては、先にデスクトップ環境を無償で提供して裾を広げるほうがよいと思う。IT関連予算が削減されてWindowsに大枚が払いづらくなり、セキュリティ上も政府がLinuxの導入をはかっている今は好機だ。初中等教育界や法曹界ではわりと一太郎は使われているから、学校や行政機関への大量導入も見込める。

Windows上でマイクロソフトと争ったオフィスアプリケーション(一太郎・花子・三四郎・五郎)での戦いに破れたのは、敵の土俵だったことを考えれば当然だ。土俵を変えれば、また戦える。そして儲けはそこに置くことになるだろう。

まずはJSフォントとATOK8程度のFreeATOKとを無償配布するだけでも、ずいぶんと歓迎されるだろう。

2003/2/21
平等と公正

阪神・淡路大震災が発生して数週間以内のころ、避難所となっていた小学校の体育館で暮らしていた人たちに義援のパンが送られた。ところが、パンの数が少なくて体育館の避難者全員に配れそうになかったため、全員分に行き渡るだけパンが確保できるまで役所はパンを誰にも配らなかった――という報道記事を読んだことがある。悪平等の典型だろう。

基本的人権の根本のひとつは平等権であるといわれている。(もうひとつは自由権。)私たちは法の下に平等だから、どんな者でも1人1票の投票権を持っている。お前はアホだから1/3票とか、賢いから3票もらえる――というわけではない。また、どんなに頼りなくても、基本的には満20歳になれば成人として認められる。家柄によって量刑にちがいが出ることもない。

しかし、平等が必ずしも社会的な公正を意味しているわけではない。特に資源を配分する場合には、必要とされる人に与えるのが公正であると私は思う。上のパンの例では、まず育ち盛りの子供たちに与えるべきだろう。教育の分野でも、教育基本法を誤読した不幸な方々が同法を悪平等だと主張することがある。実際には「能力に応じて」という語句があるのだが……。

ところがおかしなことに、教育基本法をけなす頭の不幸な論者は税制に関して悪平等を主張する傾向があるのだ。累進的な所得税や相続税を非難し、人頭税のような税制が望ましいという。そしてその主張の際には、誰もが所得税の納税者に――などという平等意識が持ち出される。平等を重んじる法曹界でも保釈金を一律200万円などとはしないだろうに。


2003/2/15
内蔵TrueTypeフォントの指定

LaserWriter 16/600 PS-Jで以前からもったいなく思っていたことに、内蔵TrueTypeフォントを使っていない点があった。このプリンターはPSプリンターでありながら、漢字Talk 7.1に付属していた和文TrueType書体を内蔵ハードディスクに搭載していて、当時のPSプリンターとしてはTrueType書体の印字が群を抜いて速かった。Osakaや平成明朝W3、平成角ゴシックW5はいいとして、リョービの本明朝-Mや丸ゴシック-Mなんかを死蔵させておくのは忍びない。

実はこれらのTrueType書体にもPostScript名がつけられてあって、指定可能なことを先ほど知った。下に一覧を記しておく。

HeiseiKakuGothic-W5
HeiseiMincho-W3
HonMincho-M
MaruGothic-M
Osaka
Osaka-Mono
Ryumin-Light-KL
Ryumin-Light-KL-Mono
ChuGothicBBB-Medium
ChuGothicBBB-Medium-Mono

あとはこれらが代替書体として指定できればいいなあ。


2003/2/10
ハブからハブ抜きへ

かつてアップルは「デジタルハブ」という金看板を持ち出した。デジタルデータを扱うさまざまな機器の中心にMacが位置づけられたイラストを憶えている。この構想のもとで、iTunesやiMovie、iPhotoといった一連のiアプリケーションが提供されている。

デジタルハブ構想を目にしたときに私が思い出したのは、ドン・ノーマンの本に書かれていた、機器は汎用製品から特殊用途の製品へと分化する、という主張だ。その本では、かつて複数のアタッチメントが装着できた汎用のモーター(ミシンにもミキサーにもなる)が、やがて複数の製品の中に埋め込まれていくさまが記述されていた。

恥ずかしくも、私は長らく上の主張を誤解していた。ワープロ専用機が衰退してパソコンが勃興したこと、テレビ・ビデオが登場したあとにテレビデオができたこと、各種アプリケーションができたあとに統合アプリケーションが生まれたことなどなど、逆に統合化する商品もあるではないか。必ずしも分化ばかりされるわけではあるまい、と考えていた。

考えの浅はかさに気がついたのは去年の暮れになってからだ。ノーマンのいう分化とは、使い手の欲求に沿って(技術的な問題ではなく、利用場面の問題として)新製品が生まれる際、構成部品が分化する――ということなのだ。たとえば液晶表示装置内蔵の小型DVD再生機は、どこででもDVDが見たいという欲求に沿って生まれてきたもので、このときに「表示装置」や「DVD駆動装置」が分化した、と考える。

このように考えると、いまのパソコンは分化を生み出す幹のような役割を担っているのだろう。その中で、家電として通用するような便利な機能は枝分かれして製品になる。

したがって、デジタルハブは長期的には「ハブ抜き」になってしまう可能性がある。パソコンを排除して、周辺機器どうしで勝手につながってしまうかもしれないからだ。たとえばデジタルカメラで撮った画像データを印刷するとき、カメラを直接プリンターにつないでしまうほうが初心者には簡単だ。ファイル共有やサーバーの設定をしなくても、メルコのNAS(これには組込用のLinuxが入っているのだろう)を買えば簡単にネットワークディスクができる。当然So!(03/02/02)で言われていたように、テレビ番組を録画してDVD-Rに保存するといったことも、やがては家電にシフトしていくのだろう。

以上のようなことを長々と書いたのは、郵便受けに入っていたエヌ・ジー・シー通販のチラシを見て、こんなものまで一般家庭向けに売られるようになったのか、と思ったからだ。パソコン不要のCDコピー機だそうである。

2003/2/4
Windows CE環境整備

機会あってモバイルギアII MC-R300のWindows CE環境を整備した。MC-R300は白黒液晶のWindows CE 2.00搭載端末で、単三アルカリ乾電池2本で25時間駆動する低燃費(定格2.3W)が売りである。後継機種のMC/R320やR330とちがって、PCカードに加えてコンパクトフラッシュ(CF)スロットやバックライトを搭載している点がポイントだ。

まずはFTP関係。R300をサーバーにするには、FTPサーバーソフトウェア「ftpsrv」を使う。NetFinderから接続するときには、cdを互換モードにしておく必要がある。Fetchでは問題ない。(注意:NetFinderやFetchは、Mac用のFTPクライアントソフト。)逆にR300をクライアントにするには「ceFTP」を使うとよいだろう。

また、レジストリの変更で動作を高速化させる方法を知った。TascalRegEditを使ってレジストリを2カ所変更すると、体感速度が向上する。ひとつはフォントキャッシュの制限を緩和することで、Windows CEのデフォルトの最大キャッシュサイズである16KBを100KBほどに変更する。これは劇的だった。CE端末はROMよりRAMからの読み込みのほうが速いようだ。ATOK Pocketの辞書をROMからRAMに複製して高速化を狙うのと同じ試みだろう。もうひとつは、ウィンドウアニメーションを切ること。こちらのほうは「画面」のプロパティで変更できてしかるべきだ。

それから、かつてR300の欠点として書いていた「キーボードが打ちづらい」点に関して新たに知ることがあった。R300には初期ロットと後期ロットとがあり、初期ロットはMS-DOS版と同じ打ちづらいキーボードだが、後期ロットではR/320と同様のパンタグラフ式になっている、という。NECフィールディングの立川店に問い合わせたところ、「詳しくは知らないが、R300用のキーボード部品は1種類しかない」とのことなので、この情報は正しいかもしれない。(1種類に統一するなら前期ロットではなく後期ロットにするだろう。)運を試すために27日に修理に出した。

2月3日に修理完了との連絡を受け、取りに行く。おそるおそる打鍵してみると――これはすごい。単にパンタグラフ式になっているのみならず、タッチもR320より軽やかになっている。モバイルギアのカラーモデルでもR4x0とR5x0とでタッチが異なることがあって、R320のタッチがR4x0に似ているのに対し、返ってきたR300のそれはR5x0に似ている。ひょっとして、H67195A74なるキーボードユニットはR500と同じなのか、それともfor DoCoMoと同じものになっているのか。いずれにせよ、修理費12,600円は無駄ではなかった。

ところで、修理に要した期間は今回もちょうど1週間だった。迅速な修理体制は、もっと評価されてよい。しかし、修理状況を逐一Webで確認できると伝票にあったのだが、こちらは3日までずっと「お預かりしました」のまま更新されなかった。4日に見ると、いきなり「修理完了しました」に飛んでいた。

修理状況検索サービスの画面

そのほか参考にしたページ。「モバギII・シグマリIIのTips」「Windows CE活用法」「Win32 プログラミングモデル:組み込みソフトウェア開発入門・3」。